俳句の作り方 柘榴の俳句

     実ざくろや妻とは別の昔あり  池内友次郎いけのうちともじろう

    みざくろや つまとはべつの むかしあり

 

 

     実ざくろが秋の季語。

    「果実はこぶし大の球形で、9月から10月頃に熟すと外皮が裂ける。

    中にはルビーのような小さい実がびっしり詰まっており、食べると甘酸っぱい。」

    (よくわかる俳句歳時記 石寒太編著)

 

 

     句意を申し上げます。

    私たち(作者とその妻)が出会う前はそれぞれ別の人生を歩んでいました。

    結婚して歳月がたちそれらの人生は今では昔と呼べるほど遠くなりました。

    あ、柘榴が熟している。

    実がぎっしり詰まっている様子は、私達のともに暮らした時間を称えているかのようだ。

    実ざくろや妻とは別の昔あり

 

     結婚後に、妻とは別の昔があるのなら少しだけ寂しい句になります。

    一緒に暮らしてはいても夫婦それぞれの時間の過ごし方には違いがあります。

    それが積み重なって長い歳月となり、別の昔となって存在しているのです。

    しかし、柘榴の花が咲いて実がなるように作者は結婚の充足感に満たされているのです。

    実ざくろや妻とは別の昔あり

 

 

     池内友次郎について・・・。

    1906年生まれ。1991年没。東京都出身。

    高浜虚子の次男。

    慶応義塾大学の予科に進学するも、21歳の時、渡仏する。

    パリ音楽院で作曲技法を学ぶ。

    10年後帰国して大学で教鞭をとる。

    フランス流の作曲技法により、日本の音楽教育に多大な影響を与えた。

    我が弾くに耕す土のひびきかな

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